リース「こ、ここは……！？」
ケビン「黒騎士と戦った…」

……ここは彼と相談して私が築いた別れの場所。
ふふ……やっぱり役に立ったわね。

ケビン「あ……」
リース「ね、姉様……」

ケ「騎士装束……」
ケ「……やっと……≪聖痕≫から解放されたんやな」
ル「ふふ、おかげさまでね」
ル「２人とも……本当によく頑張ったわね」
ル「あれだけの困難を最後まで決して諦めずに……」
ル「うんうん。さすが私の自慢の弟と妹ね♪」
リ「……姉様…………」
ケ「……はは………ホンマ、相変わらずやな」
ケ「それにしても……≪聖痕≫はちゃんと消えたんか？」
ル「いいえ……まだ、私の中に残っているわ」
ル「あなたたちが勝ったことでようやく抑えられたけど……」
ル「このまま放っておけばすぐに力を取り戻すでしょうね」
ケ「そうか……」
リ「ど、どうしたら……」
ル「……だからね、ケビン」
ル「最後はあなたの手で止めを刺して欲しいの」
ケ「え……」
リ「ね、姉様……まさか！？」
ル「そう、ここにいる私ごとよ」
ル「そうすれば、この世界にコピーされた≪聖痕≫は完全に消滅するでしょう」
ル「セレストさん……だったかしら？」
ル「彼女の力も戻るはずだからきっとあなたたち全員を元の世界に帰してくれるはずよ」
リ「で、でも……そんな……！」

ケ「なあ姉さん……」
ケ「……それが必要なんやな？」
ル「ええ……それ以外の選択肢は存在しない」
ル「５年前のあなたは、暴走して殆ど意識も無かったけれど……」
ル「今度は、あなたは自分の意志でそれを行わなくてはならないわ」
ケ「………………………………」
リ「姉様……ひどいよ……！」
リ「ケビンにまた……そんな事をさせるなんて……！」
リ「それに……それに……そうなったら姉様は……！」
ル「ごめんね、リース……」
ル「でも、これだけはどうしても私が言わなくてはならないから」
ル「──ケビン・グラハム。最後にもう一度だけ言います」
ル「私を滅して、皆と共に元の世界に還りなさい」
ル「姉として、騎士の先輩として、あなたのお母様の代わりとして……」
ル「私にできる最後の忠告です」
リ「……あ………」
ケ「………はは…………」
ケ「ホンマ……優しいくせに誰よりも厳しい姉さんやな……」
ケ「でも……それでこそルフィナ姉さんや」
リ「ケビン……！」
ケ「ごめんな、リース……」
ケ「２度も……お前の姉さんをこの手に掛けることになって……」
リ「だ、だったら……」
リ「だったら私も一緒に撃つ！」＜

ケ「なっ……！？」
ル「………え……………」
リ「も、もう私は……２人に置いていかれたくない……！」
リ「見ているだけはイヤ……！ただ待っているのもイヤなの！」
リ「それが必要だというなら……」
リ「今度は私も……ケビンと一緒に罪を背負う！」
ケ「リース……」
ル「ふふ……なるほどね」
ル「５年か……本当に成長したわね」
ル「たしか、ケビンと同じくアインに師事したのよね？」
ル「ふふ……彼女には感謝しなくちゃ」
リ「ね、姉様……」
ル「……私は異存はないわ」
ル「ケビン、あなたが決めなさい」
ケ「ちょ、ちょっと待ってや！」
ケ「これはオレが……オレ一人が背負うべきものやろ！？」
ケ「なんでリースまでそんな……」
ル「──君も男だろう！ケツの穴の小さいこと抜かすな！」＜
ル「って、アインだったら一喝してるかもしれないわね」
ル「まあ、私はあくまでケビンが好きに決めればいいと思うけど」
リ「ね、姉様ったら……」
ケ「はは……もう…………ホンマかなわんわ……」
ケ「………………………………」

ケ「リース……こっち来いや」
ケ「２人で……一緒にボウガンを持とう」
リ「……うん………！」

ル「ふふ……私もまだまだだったわね」
ル「そんな選択……思いつきもしなかった」
ケ「え……」
リ「姉様……？」
ル「ねえ、ケビン……」
ル「さっき、私が立っていた場所まで歩いていくつもりって言ってたわね？」
ケ「あ、ああ……」
ケ「先は長そうやけど……そうさせてもらうつもりや」
ル「それはあなたの自由だけど……出来れば、考え直して欲しいかな」
ル「私もずっと……迷い、悩みながら歩んできた」
ル「……誰もが幸せになれる世界」
ル「それが存在し得ないと知りながら少しでもそれに近づけないかと必死になって足掻く毎日だった……」
ケ「……望むところや」
リ「私も……」
リ「できれば私も姉様と同じ道を歩きたい」
ル「ふふ……仕方ないわね」
ル「……だったら……」
ル「だったら私のいた場所なんて小さなことを言わないで」
ル「私が夢見て、辿り着けなかったそんな場所を目指して欲しい」
ル「あなたたちなら……きっとそれが出来ると思うから」
リ「姉様……」
ケ「はは……メッチャ大変そうなことをさらりと要求するなぁ……」
ケ「でも……分かった」
ケ「そこまで言うんなら意地でも目指したるわ」
リ「……うん、約束」
ル「ふふ……あくまであなたたちのペースでね」
ル「──さてと。あまり待たせてしまっては他の人たちにも悪いかな」
ル「ケビン、リース。……そろそろお願いね」
ケ「……ああ…………」
リ「……………うん」

リ「………っ…………」
ケ「大丈夫……オレが付いてる……」
ケ「ゆっくり……そう……ゆっくりでいい」
ル「ふふ……」
ル「あなたたち２人に女神の導きがありますように……」
ル「ケビン……リースのことをよろしくね」
ケ「……ああ、任せといてや」
ケ「今まで……本当にありがとう」
リ「ね、姉様……わたし……わたし……」
ル「ふふ……リースもケビンのことをよろしくね」
ル「２人とも……いつまでも仲良く元気でね」
リ「……ね、姉様……」
リ「……うん……！大丈夫だから……だから……！」
ケ「さよなら…………ルフィナ姉さん……」

リ「………ううっ…………」＜涙流している、芸が細かい
リ「…………ああっ………………」
ケ「……リース……大丈夫や」
ケ「いつの日か……俺たちも辿り着けるはずや」
ケ「姉さんが夢見て……辿り着こうとしてた場所に……」
ケ「多分……姉さんはそこに先に向かっただけのことや……」
ケ「……だからきっと………」
ケ「きっとまた……会えるやろ」
リ「うううっ……ああああっ……」




ヨ「そうか……君は……」
ヨ「会えなくなるのが”痛い”んだね……？」
レ「……っ…………」
エ「え……？」
ヨ「大好きな相手と……」
ヨ「一緒にいたいと思う相手と会えなくなってしまうこと……」
ヨ「それが……痛かったのか」
エ「あ……」
レ「そ、そんなことない！」
レ「そんなこと……あるはずないんだから！」
レ「だってレンはレーヴェが死んだって聞いても”痛く”なかったもの！」
レ「とっても哀しかったけど”痛く”はなかったもの！」
ヨ「それはね、レン」
ヨ「君がレーヴェの死を納得しているからだと思う」
ヨ「もう会えないと判っているから素直に哀しむことができたんだ」
ヨ「……でも、大好きな人と本当は会えるのに会えない……」
ヨ「それは確かに何よりも”痛い”ものだから」
レ「違う……違うもん……！」
ヨ「だから君はエステルを……」
レ「違うんだったらぁああっ！」＜
エ「…………………………………」
エ「ね、レン。教えてあげようか？」
エ「なんで笑顔でお別れできるかって」
レ「……いらない……！そんなの知りたくない……！」
エ「……それはね」
エ「大好きな人、大嫌いな人、そんなのに関わりなく……」
エ「どんな人とだって……絶対に別れが待っているからよ」
レ「…………え………………」
エ「あたしとヨシュアだってそう」
エ「このまま結婚して、子供を作ってずっと一緒にいたとしても……」
エ「どちらかの寿命が来たら必ず離ればなれになっちゃう……」
エ「もちろん事故とか、お互いの気持ちが離れることで別れる可能性もゼロじゃない」
エ「あたしたちはみんな……そんな不安と戦っているんだと思う」
レ「あ……」
ヨ「エステル……」
リ「……エステルさん……」
ケ「…………………………………」
エ「でもね……だから笑うのよ！」
レ「……！？」
エ「みんなで一緒に笑うことでその不安を吹き飛ばしちゃうの！」
エ「みんなで笑えば一人じゃないって実感できる！」
エ「また会えるかもしれないってドキドキ、ワクワクもできる！」
エ「そうやって強がりを言い合ってまた、会おうねって約束してそれぞれの道を歩いていく……」
エ「……多分、みんなそうだと思う」
レ「みんな……」
エ「うん、みんなよ」
エ「だからレン……あたしたちと一緒に笑おう？」
レ「あ……」
エ「ずっと一緒にいるなんてあたしには約束できない……」
エ「でも、レンの事が好きだから」
エ「あんたが大人になるまで見守ってあげたいと思うから」
エ「だからそれまでは……何があっても絶対に一緒にいる」
レ「う……あ………」
エ「そして……レンが大人になって本当にしたいことを見つけたら……」
エ「それが、あたしたちと離れることになる道だったら……」
エ「その時は一緒に……とびきりの笑顔でお別れしよう」
エ「先のことは判らないけど……まずはそのあたりでどうかな？」
レ「ううっ……ああっ………」
レ「……そんな……そんなの………」
ヨ「すぐに決める必要はないよ」
ヨ「僕たちは……もう覚悟を決めてるからさ」
ヨ「レン……君の家族になろうって」
レ「…………あ…………………」
エ「ま、あくまであたしたちの希望だけどね」
エ「父さんも許してくれたし、あとはあんた次第ってわけ」
レ「………ううっ………………」
レ「もう……もおういいからあっ！」＜
エ「……レン………」
レ「……だったら……！だったらレンは全力で逃げる！」
レ「エステルたちに捕まらないよう全力で逃げるからっ……！」
レ「……だから……だからっ……！」
ヨ「うん、望むところだよ」
ヨ「決心が付くまで頑張って逃げ続けるといい」
エ「フフン、言っておくけどあたしは諦めが悪いわよ〜？」
エ「いくらレンが隠れんぼが得意でも絶対に見つけてやるんだから！」
レ「ううっ……！…………キライ……………」
レ「エステルもヨシュアも２人とも大ッキライっ！」＜
レ「……でも……でも同じくらい大好き……っ！」