| Interlude墜落日記 |
|
このスタイルが本来の姿なのですが、実際はこの日記は、当時メインのPCが逝っていたために掲示板にて展開しておりました。 よって、新規ではなく再録の形となりますが、掲示板の方ではかなり下がってしまってますので、この機会に初めてご覧になる方もおいでかもしれません。まあ、マイナーもいいところなタイトルなので、それほど注目が集まるとは到底思えませんが。はっはっは。 ・お約束 当コンテンツは、プレイと平行して記述していく日記形式「でした」。 必然的にネタバレを含みますので、未プレイでこのタイトルに興味のある方にはこのまま退場をお勧めいたします。悪しからず。 ○ファーストインプレッション 製作LONGSHOT、と聞いて思い出すのは元祖OVA版パトレイバー。 「伸るか反るかのデッカイ賭け」を意味するらしいけど、社名にするにはちと不吉な単語なのでは？ さて…無難なところでOPから。 明朝体のテキストが乱舞する、以前流行った？ムービーながらも、抑え気味なトーンが不気味さと暗さを暗示するかのようで、最初の印象としてはまずます。 インターフェイスそのものはインターチャネルの標準装備で、AIRなどでお馴染みのもの。 コンシューマ機向けとしてはKIDのものと双璧を成す良好な操作性、なのはいいんだけど、選択肢までさかのぼれてしまうのは便利な反面やり過ぎ、かも。 ぶっちゃけた話、このインタールードの何に最初に興味を持ったかというと、それは「絵」。 弓、月、それから袴…という冗談はさておき（そうか？）、月を背にした目つきのきっついねーちゃんというだけで完全なるツボっ！ こーいう線の鋭い絵、好きだなぁぁぁ…。 と、まだ見ぬミステリーに胸躍らせながら、本編に進むのであった。わくわく。 ○3/19〜特定層へ向けたオマージュにインチャの仕事を見た日のこと 事前情報によると、玉シナリオはあまり本編と直接関わりが無いとのこと。 となれば、当然これから始めますわな。美味しいものは最後に残した方がいいし。 しかし、その選択が正しかったのか正しくなかったのか。割と早いうちに頭を抱えるハメになるとは、この時点では予想すら出来ないのであった。 でー、この玉城麻衣子、とゆーキャラ。 こぉ…最初に見て数分後には眉根を揉む自分の姿を見ることになる…。 早い話が。 やかぁしいぃぃぃわっ！！ うーむ。 あんましゲームのキャラでは見ないタイプであることを評価すべきかそーでもないのか、寧ろ現実にいそうなタイプでは…ある…のかなぁ…？ なんせ女子高生なんぞに知り合いおらんからその辺り判別しよーがないけど、少なくとも自分が高校生だった頃にはこーゆーキャラは見当たらなかったところを見ると、そー思うことでもしかして自らを納得させようとしていると思うもいと悲し。 シナリオ自体は非常に展開が早く（どちらかというと悪い方に）、なんつーか他人の淡々とした日常を切り出して見ているようであんまり居心地が良くない。 主人公の妄想にすら３枚もCGを起こすような手の込んだ仕事と、それにストレスを感じさせないレスポンスの良さはハッキリ言ってお見事という他は無いけれど、現状それが作品全体に対してなんらかの影響を及ぼしているか、ってーと相当に微妙。 …いーんか？これで。 と、不安を醸し出してはいるけれど、ま〜昨今のゲームがこんなんで終わるわけはなかろーし、そもそも「おっぱい」を連呼するよーではPS2に移植など覚束ないだろーからこの際DCユーザーの特権として楽しむが吉（←甘い）。 で、ですな。 このシナリオのヒロイン（だよねぇ？）のはずであるところの玉がバイトするファミリーレストラン。 いやまぁ、最初に見た時は別にどーってことなく流してはおったのだけれども、ウェイトレスさんの女性にどことなくデジャヴュ…。 立ち絵で猫を抱えて毛皮を羽織り、なんか顔色といい髪といい、ついでに声といい、どぉ〜〜〜っかで見たような聞いたような…。 ちなみにご尊名は、「嶋」。 ん〜〜〜、嶋、しま、シマ、シマ…シーマ。 って、をい。 慌ててバックログをさかのぼるとあんれまぁ。 てんちょさんは禿げで復讐云々を誓う「寺図」、コックの「加藤」さんは後ろで髪をしばって、止めに店の名前は「アンナ・デラーズ」 あにょにゃー。 んでこの後も出てくる出てくる。 金髪のにーちゃんとインド系女性のカップルだとか、北宋がどーのこーので「いい音だろう？」とかのたまう顔色の悪い客だとか、玉に「いい目をしている」とゆーいっぱい客を引き連れてきたおっさんだとか。 オチも立派に、店の乗っ取りを画策した嶋さんはそれに失敗して寺図てんちょもコックの加藤さんもいなくなった後は、なんか黒い制服のお店に変わっておりましたとさ、ですと。 ここまで徹底してたら何も言えん。 しかし、店の名前を「アンナ・『デ』ラーズ」にした時に決定したんでなかろーか。この流れは。 奥が深い。 ○3/22〜白身魚の刺身を思うのこと …はや（み つーか、な〜〜〜んの絡みも無く…いや、温泉に入らなかったらそれはそれで絡みはあったけど、思っていたような「絡み」は無く、前回と似たよーな感想を抱かざるを得ないと言えなくもないような気がチラホラ…。 よーするに。 いーのか、これで！？ ゴホン。 ただま、これはこれでもしかしたら後半に至ると何かしらプレイヤーの心理的に作用してくるものがあるのかも〜、という経験は結構あるので現時点であーだこーだ言うのは差し控えるとして（そーゆー対プレイヤー心理戦を仕掛けてくるような内容には見えないけど）。 前回にも書いたことだけれど、登場人物に関して言えば、ぶっ飛んでいるようでいて実は妙なリアリティを感じては、いたりする。 主人公のキャラクターは昨今見かけないくらいに無色透明な特徴の無いあっさり風味に仕上がっている…どころか名前すら出てこないが。 某日本全国旅軟派師ゲーのよーな「キミ」とか「あなた」といった二人称を用いないで名前を出さないテキストは不自然になりがちなものなんだけども、この作品についてはあまりそれを感じさせないのはナカナカ上手いとは思う。 現実の会話においては、呼びかける時や会話の対象を限定する時以外は、案外二人称なんて使わないものだ。 また、例えばギャルゲについては、無理繰りにキャラクター性を引き出すためにやたらとわざとらしい言葉回しを用いることが多いのに、本作ではそれが極端ではない。 玉の言葉回しに関しては確かに極端と言われても致し方が無い面もあるが、それにしても「文字にした場合」において不自然に感じるものであり、実際音声で聞いている分には現実にあーいう喋りも（聞く方にとっちゃ迷惑極まりないけど）あり得るだろう、とも思える。 現状、この作品を評価出来る面を一つあげるとしたら、意外とそういった「音声」としての台詞を意識したテキストになっているのではなかろーか、というところだろう。 で、そー感じる傾向は次に手を出している丸藤泉美シナリオで更に顕著なんだけれども…。けれども。 ○3/28〜なんか文句ばっか言っている気がするなーのこと ひとことで言って。 今まで触れていた、「妙なリアリティ」とゆーのがこのシナリオのこのキャラに凝縮されているというか、この「すちゃらか公務員」っぷりがリアルに感じる遠因の一つだとしたらそれはそれで日本のためにはひじょ〜に危険な…ってそんなことまで考えてゲームせんでもいいがな。 「妙なリアリティ」という点で一つ記しておきたいことだけれど、この行き着けの甘味処（違）のマスター、これもまたいなさそうなんだが「いても不思議じゃない」キャラクターを醸し出していて、結構面白い。 こーゆー特異なキャラクターでアリそげな印象を与えるというのも、実際なんらかの意図があってのことか単なるライターの癖みたいなものなのか不明ではあるけれども、ぎゃるを比較的前に出している内容にしては結構変わっているかもなぁ…。 で、まぁ…これも文句じみてはいるんだけれど、玉シナリオに輪をかけて「他人の日常切り出し」感覚が強い。 普段の生活の中でのエピソードが頻出するだけに、余計にその感じが強調されて、この場合それだけを単独で聞いていると退屈極まりない。 が、玉シナリオ（の本筋？）と違って、序盤の終わり？頃からミステリー色が強くなってくるために後になってまた効果が出てくるんじゃないかな〜…とは思っているんだが。 それにしてもこの電波入っているっつーか強力な妄想癖のあるばくねうねーさんなんとかならんのか〜。歳が歳だけになんかコワイんだけど。 ただし、そーいう感覚を持てるのも変なところで現実的なキャラクターの見せ方が功を奏しているのか、はたまたキャラクターに対する過大な入れ込みを阻止しているのからなのかが判断つかず。 意外と「意図的に」やっているように感じる…。 さて、ゲームの方は、と。 「王子様探し」などとゆー思わず頭を抱えながらボタンを押さざるを得ないイベントを乗り越えた（？）辺り。 変装して夜の街を出歩いていても普段が普段だけにさっぱり説得力も緊張感も漂わせない泉美ねーさん…。 しかーし！ 「この街ね……変なことがあるのよ」 よぉぉぉぉぉし来た来た来た来たぁぁぁぁぁぁっ！！ ○4/3〜最近寄り道が多いと思うのこと 新マシン立ち上げ完了したけど、日記はこちらで続行。 なかなかイメージに合う背景が見つからないもので…。 こーいう時絵心無いのは全くもって不便極まりない！ 唐突ながらこのシナリオのヒロインは薫子さんに個人的けってー。 こーいう天然ボケお嬢様タイプはゲームにゃ結構おるもんだけど、ライフルの国体選手だとか、無敵の笑顔とか。むー。結構ツボかも。 それと、泉美、薫子、優輝の３人の会話。 散々今回は書いていることだけど、これが変なリアリティを感じる…っても俗に「かしましい」と言われる女３人集った状態なぞ、冷静な目で観察する機会なぞそうそうあるものじゃないから、所詮生活レベルから導き出される想像上の「リアリティ」に過ぎないとは思うけど、それでも「あっても不思議じゃない」レベルの印象はある。 また、会話そのものの単語の選択とか、語尾のあて方にもよるとは思うが、声優がこれまた上手い。下手に抑揚をつけないために大袈裟に聴こえず、ま、そーいうこともリアリティ云々に関わるのだろーなぁ、と思う。 しかしながら、話そのものはあんまり上手くは無い。 致命的なのが、某氏も言っていた通り、展開的に恋愛絡みの方向に持っていくならそれらしい描き方をしないと面白くもなんともないのに、なんの仕掛けも無いまま最後でちゅーして終わりって一体何？なこと。 いやま、皆無とは言わないけれど、それらしい下地が感じられない状態であのラストに持っていかれてもねぇ…。 王子様探し、という当の本人にとっての日常を通じて「非日常」が次第に覗き始めるという展開は、多分玉シナリオのなーんも起きないルートからの流れを含めてプレイヤーにそう感じさせていることを含めてのものだとは思うけれども、現段階ではあまり成功しているとは思えないなぁ…。 多分、作品のテーマとしては「日常と非日常が交錯する時の不安や恐怖」というものがあるのだろうけど（帯にも「緩やかに歪み始める『日常』。」とあったことだし）、よーするに日常の見せ方の手法が確立していても、演出がチグハグなために荒削りな感触が付きまとうのではなかろーか。会話のリアリティ的な演出と、話そのものから受ける印象が今ひとつ一致していないとゆーか。 かなり勿体無い。 つーわけで、さっぱり解明されていない本筋含めてまだまだ全体の評価は保留しないとなぁ、と思うのであった。 さて次は綾…ではなく、玉シナリオの他ルート。 最初のまんま終わられてたまるかい。 ○4/8〜いんたーみっしょん あえなく轟沈。 玉のCGがどうしても埋まらんっ！！ まぁ玉ルートから泉美ルートに移るとヤキモチやく玉のCGが何枚か挿入されたけど、それにしたって結局泉美ENDに行った時は「おいこら玉はどーなったよ」としか感想が浮かばない〜〜〜〜〜っ！！ …まーいっか。 どーせ見られないということは大した内容じゃないだろーし（←人それを「手の届かない葡萄は酸っぱい理論」といふ）。 音楽について少々。 ここしばらくやってきたテキスト系ADVの中では割と好み。 インタールードの場合、日常としての穏やかで平和な場面と非日常の場面の対比・交錯が顕著なので、意外とBGMの及ぼす力は大きい。場面の雰囲気（物語全体からしてみれば、要素と言ってもいい）の意味を増加させる意味でも、BGMについては相当力を注ぐべきだろうと思う。 その点で言えば、使う楽器の選択が真っ当で奇をてらわず、ストレートにプレイヤーの情感に訴えてくる曲はゲームのBGMとしてはまず成功しているだろう。その上、曲そのものも割と好みに合致しているので、自分としては…まず文句無し。 比較で恐縮だけども、KIDのゲームが音楽において突出した感があまり無いのも、曲そのものは雰囲気に相応しい内容なのに、音が…言っちゃ何だが使い回しっつーかこのパターンの曲にはこの音、という方程式が決まってしまっているのがその理由にあるとすれば、BGMにおける音、楽器というのも結構重要なんだなぁ、と思ってみたりするのであった。 さて、いよいよ綾シナリオ突入。 どーか玉のCGが埋まりますよーに。 ○4/9〜埋まりませんでしたのこと 綾シナリオしゅーりょー。 やや短めではありながら、ラストはそれなりに収束しており、プレイ後感としてはさほど不満は残らない…のではあるけれども、なんか納得いかない。 「世界は終わっている」。 面白いと思ったのは、こーいう展開をまず最初に持ってきていること。 衝撃の事実は根回しをした上で明かされることでその効果を高めるものだろうけど、この作品−というよりこのシナリオ自体−はその事実を前提として展開されており、それを通じて見え隠れする「和辻 綾」という存在との関わりをどう描いていくか、が注目点だろう。 ゲーム序盤で瞬間目撃する「綾」の影。 それを引きずったまま過ごす日常。 影を影として、それこそ「パンドラの箱」を閉ざしたまま推移したのが玉シナリオなら、泉美シナリオは「パンドラの箱」とは何かを知りつつも、綾シナリオの裏の進行（パンドラ計画）を含みながら、どこかの誰かが守った「日常」を享受する話。 そして綾シナリオ、箱は開かれた。 災厄は放たれたのだろうか？ 最後に残ったものは希望であったのだろうか？ 結論から言うと、決して素材としては悪くはない内容。 上位の存在の変異に伴うヒトの世界の終焉を舞台とし、当たり前のものとなっていた「日常」との決別を経て、意識し得る形としての世界の形成に幕を下ろす結末はもの悲しく絶望的であり、物語の構成として「日常」を強く意識させる作りが、それを引き立てている。 ところが。 全般的に場面と場面との繋がりが希薄で説明不足感が強く、読み手が幕間を想像しようにもその材料が足りない。 また、一つの場面においても、いわゆる「行間」に隙間を感じさせるテキストが災いしてそのシーンを俯瞰して頭の中で再構成することが出来ない。 その為、物語から強い印象やイメージを受けることが出来ず、ただ漠然と物語中の時間が進行していたように感じる。グラフィックはシームレスでもテキストはお世辞にもシームレスとは言えない。 読解力が無い、と言われるかもしれないが、それにしてもゲームテキストとしてはぶっちゃけた話、下手であると思わざるを得ない。 あるいは、そういうテキストすら虚無感、あるいは現実感の無さを演出するためのものかもしれないが、それにしたってもー少し他にやりようは無かったものか。 一方、その結末自体は比較的まとまっていて、且つ好みにも合致してはいる。 物語の謎そのものは、最後の最後ではなくそこに至る道を示す形であらかじめ提示されており、ラストは実はその事実を受けてヒトの世界がどう「終わる」のかを描くものなのだが、カタストロフや二転三転を伴わない「熱的死」のようなラストは、月を背景とした美しいCGも相まって、静かに青く終わりを迎える。 そーいうわけで、ラストに関しては玉や泉美シナリオでの仕掛け（というか両シナリオそのものが仕掛けみたいなものなんだが）もそれなりに生きており、特に泉美？が冬木に自分の「日常」の喪失を悲しく訴えかける一幕は結構グッと来てしまった。 駄作と決めつけるにしては特徴が強すぎるし、かといって佳作、秀作としようにもネガティブな感想がその足を引っ張るし、今ひとつ評価も定まらない。 他、構成についてはちょいと面白いと思った点もあるので、次回以降考察。 ○4/17〜回収率９６％達成するのこと デズラーさんアリガトウ〜。 お陰でほぼ玉のCG埋まりましたですよー。 私信はこんくらいにして。 本筋？から外れて学校の怪談検証ルートに入っても、概ね筋に違いはナシ。 最後の旅行が二人ではなく四人になったくらい。 つーか、姉のキスシーンを見ても何も動じないガモが可愛げナッシングってのはオモロナイ…ちっとは某女史を見習いたまへ。 …んで、玉ルートに関してはもう新材料出てこないだろうし。 結局は最初の方の感想に変化は無かったけれども、最初に辿ったルートだけでは見えてこなかったはるさんとチムもこっちでは出番が多く、その分このシナリオの全体像の中での意味ってのは重みを増やしたとは思う。 こーいう積み重ね。 綾シナリオに移る時、玉に別れを告げるシーンで結構グッと来るのに効果的なんだよなぁ…。 泉美シナリオについては、綾シナリオのラストで効いてくるし。 そーゆー意味では、十分作品の中で重きをなしてはいる。確かに。 さてさて、回収率１００％には届いてはいないけども、次回から考察開始。 いや、今度こそ間違い無く。多分。 ○4/20〜考察その１・月夜の名無しさん どちらかとゆーと、最近は主人公のパーソナリティがほとんど表現されていないゲームというのは少数派になる。 それはADVに限らずRPGでも同様。 「物語り」という面に拘った場合は、主人公の個性が見えないのは、例えば物語内で何かしら表現したいと思った際は足枷になることの方が多いだろうし、 こーゆー表現が適切かどうかはさておき、恋愛を比較的前に押し出した場合は、パーソナリティに乏しい主人公という存在はその筋の開祖たる諸々の作品の影響を受けているようにも思える。 顔無し名無し個性無しの効力というものは、プレイヤーに対して物語の主人公への同一性を喚起することを期待したのが起源であるわけだ（但し、RPGにおいてはそんな効果を狙ったというよりは、ロール・プレイング・ゲームの成り立ちからして当然のことだろうけど）。 ここで感情移入云々という話題になると脱線も甚だしいので割愛するが、昨今の物語性を重視した一部ジャンルのゲームにおいては、名無しの主人公というものは、その表現される世界においては逆に存在の確実性をあやふやにしかねない気がする。 それに気がついたのか、はたまた単純に物語としてのあり方を振り返ったのか、冒頭で述べた通りに個性の少ない主人公を起用した作品は傾向として少なくなっているわけだ。 で、このインタールード。 完全にこの少数派に与する。 それは顔が画面に出てこない、などというレベルのものでなく、名前すら出てこない、会話の内容でも主人公の名前を呼ぶ台詞が欠片も出てこないという徹底ぶり。 結果的に、この話の主人公はどーいう性格でどーいう容姿でどーいう思考をしているのか、という点が見事なまでにあやふやなまま展開する。 名前に関しては、実際は不自然さはさほど感じなかったので、この辺は台詞回しの巧みさが光っていると言える。 さて、前振りで触れたように、個性を感じさせない主人公というものは、効用として「プレイヤーの物語への介入意識」の増加を見込んでいる面が少なからずある。 インタールードに関して言えば、物語の構造として「日常を強く意識させる」ことが結構重要であるため、物語の中にプレイヤーを強く取り込む必要があり、古典的手法ではあるけれども、そういう意図を以て主人公に名無しを適用したのだということだろう…。 なんてことは全く考えなかった。 というのも、これまた冒頭の話に戻るが、現状では主人公の名前を出さないのは少数派であり、よーするに「これも何かの演出だろうか」と勘ぐってみたわけである。 特に、物語の本筋が本筋だけに、例えば「世界の確実性の欠如と、主人公の名前が出てこない点になんらかの関連が〜」とか色々と余計なことを考えてしまったのである。 結果的に名前に関しては「そうだったのかぁっ！」と驚愕するよーなことは無く、一つ美味しいネタを逃してしまったんでないかい？ 結果的に、残念ながらこの作品にとっては自分の好評価ポイントを逃すことになってしまったと、そーいうわけで。 結構名前のトリックって効果的なんだけどなぁ…小僧さんの某作品が物凄いことやってたし。 ○4/23〜考察その２・ああ君は行く懐かしき日々を ぶっちゃけ今回のタイトルにはなーんの意味も無かったりする。 やれ無意味だそれ理解が出来んだのと散々な言い様をしてきた玉、泉美シナリオであるけれども、実際の所、物語…作品としての構造みたいなものとしては比較的妥当な位置づけではなかったかなー、とも思う。 どーあっても中心となるのは綾シナリオであり、全てはここに集約しているのは間違い無い。 ただ、最近のゲームではどちらかというと、個々のシナリオで情報を小出しにしておいてそれをプレイヤー側で統合するか、あるいは全ての情報を集約する形のシナリオが最後に来るか、というパターンが多いように思うのだが、本作はあまりその形になってはいない。 というのも、他の２つのシナリオでも確かに綾シナリオで明かされるべき内容は匂わされてはいるけれども、その謎自体は核心として中心に位置しない、進行を動機付ける力になっていないからだ。 それでも泉美シナリオにおいては、事態が進行する裏に存在してはいるがはいるが、結局本筋の謎については最後の最後で解明する道を閉ざす形で終わっている以上、それを切り離した結末となってしまっている。 それでは、一体この２つの話はどんな意味があったのだろうか。 玉シナリオ。 やや極端ではあるけれども、主人公たちの「日常」を強く定義付けている。 これは、綾シナリオにおいて繰り広げられる「非日常」との対比を強くし、主人公がその「日常」と決別するシーンの重みを一段と増している。 内なる心で玉に分かれを告げた時。 泉美シナリオは、4/9で綾シナリオについて述べた時に多少触れているが、綾シナリオの結末において失われたもの、守っていかなければならないものの存在感を強く演出している。 要するに、そーいう位置づけなのだと。 本作は、プレイを始める前は実は割合にロジカルな内容…物語の構造が比較的キッチリ組まれた内容のものだと思っていたけれど、プレイしてみるとそんなことはあまり無く、むしろ中心となる綾シナリオを情緒面で押し上げるように他の２つのシナリオが存在していた、ある意味ウェットで情感に訴える内容であったように思う。 その目論見が成功していたかどうか、となると多少微妙ではあるけれども、「失われし日常」の重さに多少なりとも想いを馳せることは出来たはず。 さようなら。 かつて過ごした日々。 在ることが当然であった、幸せな日々。 思ったよりも時間かかったけれど、次で終わり。 少なくともこの日記のネタとしては今年前半の大本命たる、「MyMerryMay be」が間近でもある故。 ○4/27〜考察その３・つまるところ 何が足りて何が足りなかったのかを考えてみると、思い至るのは「ネタとしての良い予感」があって、「それに満ち足りなかった」ことが残ってしまったのだろーと思う。 端的に言ってしまえば、こちらが期待していたものは上記にもあるとおり「ロジカルに、冷たく展開する物語」であり、それがかなわなかったということなのだ。 世に「嬉しい誤算」という言葉がある通り、期待したものがそのまま満たされないのは即ネガティブっつーのは早計なのだが、どーにも今回は裏切った展開の方がちとパンチ不足。 これも再三触れてきたことだが、本筋たる綾シナリオは、他の二つのシナリオに情緒面から支えられる物語構造であったと思う。その狙い自体は決して悪くはないし、むしろ全体に漂う冷えた感覚が一気に熱くなるのだったらむしろ効果が倍増しても良さそうなもの。実際、綾シナリオのラストの展開は「そー来たかっ！」とツボに入りかけたわけだし。 ただまぁ…さすがにお互いのシナリオに接点が無さ過ぎて、脳内で補完するにも材料が乏しくてそれが難しかった、というのが苦言を呈する点。 あと、文章もゲームに適したスタイルとは言い難かった。 グラフィックが異常に多いということで、作品から受け取る情報量そのものは実は他の作品に比べて極端に少ないということは無いのだけれども、どーにもそのグラフィックに見合った文章ではなかった。 どちらかとゆーと主人公の独白めいた、一方的なスピードで他のキャラの内面を詮索するよーな書き方で、このゲームの場合むしろ三人称で淡々と表現した方が相応しかったんではなかろーかと今更ながら思う。 酷評っぽいのが続くけれども、グラフィック関係は大変充実していてそこは素直に評価。 特に「細かい仕事してんなぁ」と唸ったのが駅のホームの群衆のシーンで、これ綾の影が写っているパターンと写っていないパターンの２種類ある。 ちと検証していなから何とも言えないけれど、もしかしたらこれ綾がシナリオに関わっている展開かどーかで使い分けしてるんじゃないのだろーか。 あと、これも前に触れたが音楽も結構好みでOK。 問題はゲームクリア後のサウンドテストが無いことで、初回版特典のCDにも一部収録されていない曲があって、そこは残念。 どちらかと言えば愚痴の連続ばかりみたいな今回のプレイ日記であったけれども、作品そのものに対する評価としては、「物語として意図したこととそれを実現する手段がチグハグ」「グラフィックを鑑賞するソフトとしては及第」と、まぁ実に微妙な内容。 元々テキスト系ADVに関しては、文章に対する拘りが大きいので、本作のようにそれが少々危険な領域に踏み込んでいるとどーにも盛り上がりに欠けてしまうのだ。 故に、この日記もテンション上がらないこと夥しかったわけだが、まー高評価のソフトにばかりあたるわけじゃないし、たまにはいーんでないの？…ってのは単なる開き直りかや。 それでは、此度は幕。 |